ロボット支援根治的前立腺全摘除術
前立腺がんの根治手術は、全身麻酔をかけて前立腺・精嚢を尿道と膀胱から切り離して摘出し、膀胱と尿道をつなぎあわせるもので根治的前立腺全摘除術と呼んでいます。
当院ではダビンチという手術用ロボットを使って腹腔鏡手術をおこなうロボット支援根治的前立腺全摘除術を行っております。
下腹部に6本のトロカーといわれる器具を刺して、このうち4本を用いて術者がロボットアームについたカメラや鉗子や電気メスを遠隔操作して手術を行い、あとの2本を使って 助手が針や糸の出し入れなどを行っています。
合併症として、術中には出血、術後には尿失禁と勃起不全(ED)などがあります。出血は少ないので他人の血(血液センターからの輸血)が必要となることはほとんどありません。尿失禁は立ち上がったときや咳・くしゃみなどお腹に力を入れたときに尿が漏れる腹圧性のものが多いですが、90%以上の方が術後3か月以内におむつが1枚以下までに回復しています。勃起不全はほぼ必発ですが、再発リスクが低い方では勃起神経を温存する術式も可能です。
患者さんのメリット
①身体への負担の少ない低侵襲手術
開腹手術と比較して『傷口が小さい』『痛みが少ない』『出血量が少ない』『回復が早い』
②回復が早い
傷口が5~12mm程度とても小さいため、回復が早く、 短期間の入院が期待できます。
③尿失禁の回復が早い
術後早期で尿取りパッドが必要なことはあります。
④性機能の温存効果が高い
⑤高い安全性と確実性
肉眼より正確な3次元の立体画。狭い範囲でも360°自由に器具を操作でき、人間の手以上の複雑かつ繊細な手術が可能です。このため直腸損傷などの合併症も極めて稀です。以前開腹で前立腺全摘除術を行っていた時は出血が多く侵襲が高い手術であったのでは75歳ぐらいまでの方が適応となっていましたが、RARPになり出血なくできるようになったので80歳の方でも元気な方は適応としています。
手術までの流れ
①泌尿器科の外来を受診
●診察内容
- 診断の確認
- これまでにかかった病気や内服されているお薬の確認
※お薬手帳をお持ちでしたらご持参ください。
●術前検査
- 血液検査/レントゲン/心電図/呼吸機能検査
※必要に応じて検査が追加されることがあります。
●手術のご説明
②入院から手術まで
- 手術前日の午前に入院していただきます。
- 入院後、看護師より病院での過ごし方について説明いたします。
- 麻酔科医より、全身麻酔について説明いたします。
- 食事は手術前日の夜まで可能です。
③手術当日
- 手術は基本的に午前9時から開始します。
- 当日の朝に少量の飲水は可能ですが、以後は禁飲食となります。
- 浣腸をします。
- 点滴が始まります。
- 手術開始の少し前に、看護師が手術室にご案内します。
④手術後の流れ
- 手術後はベッドに寝たまたお部屋に戻ります。
- 翌日の朝まではベッド上で安静、禁飲食となります。
- 手術翌日の朝から飲水開始、歩行開始となります。
- 術後2日目か3日目に、お腹に入っている管を抜きます。
- 術後6日目に、尿道と膀胱の吻合部の回復をレントゲン検査で確認します。問題がなければ翌日以降に膀胱に留置された管を抜きます。
- 排尿の具合を数日確認して退院となります。
退院後について
- 約1ヵ月後に外来を受診していただき、摘出した前立腺の病理検査結果の説明、術後の傷や排尿状況について確認します。
- 以後は1~3か月おきに通院していただき、血液検査でPSA値をフォローします。
- 退院後から通常の日常生活を送っていただけますが、過度な腹筋運動や、長時間の座りっぱなしの姿勢は避けるようにしてください。
- 過度の飲酒も控えてください。喫煙される方は、これを機に禁煙してみましょう。
- 術後のPSA値の様子で追加治療が必要になる場合があります。
泌尿器科