頭頸部がんは脳・眼球・脊髄を除く、鎖骨から上の頭部と頸部の領域に発生するがんのことをいいます。 この領域には鼻・副鼻腔・口腔・喉咽頭・唾液腺・甲状腺といった部位が含まれます。 病名としては、口腔がん(口腔底扁平上皮がん、頬粘膜がん、舌がんなど)、咽頭がん、喉頭がん、鼻・副鼻腔がん、耳下腺がん、外耳がん、甲状腺がんなどがあげられます。
頭頸部がんは放射線治療効果の高い「扁平上皮がん」が多く、治療後の外見の変化、発生や咀嚼に与える影響が少ないため、放射線治療が広く用いられています。Ⅰ・Ⅱ期の早期がんに対しては原則として手術もしくは放射線治療、Ⅲ・Ⅳ期の進行がんについては手術・放射線治療化学療法を組み合わせた治療を行います。
外部照射とは、リニアック(直線加速器)という放射線治療装置を用いて、高エネルギーのX線や電子線を体の外から照射する治療法です。咽頭がん・喉頭がんに対し当院では強度変調放射線治療(IMRT)を行います。従来のX線治療(3DCRT)とは異なり、腫瘍に対しては多くの線量を照射し、正常組織にかかる放射線量を減らす照射が可能です。頭頸部がんの場合、腫瘍の周囲に嚥下や咀嚼、会話などの機能を担う臓器が多いため、正常組織への線量軽減が可能なIMRTは、治療中の副作用や、治療後のQOL向上に役立つことがわかっています。
小線源治療とは、体内に直接小さな放射線源を治療する部位に挿入し、腫瘍へ直接放射線を照射する治療法です。口腔がんに対する放射線治療としては、高線量率小線源治療(HDR)による組織内照射が有効です。HDRは一時的に体内へ線源を挿入し、治療後は抜去します。HDRは線源から離れると線量が大幅に減少するため、周辺組織への被ばくを最小限に抑えながら、腫瘍には短期間で大量の線量の照射が可能となります。