重要なお知らせ

胆道がん

胆道は、胆管、胆のう、十二指腸乳頭という3つの部分に分けられます。
胆管は、肝臓の中に張り巡らされた細い管(肝内胆管)として始まり、それらが木の枝が幹に向かうように合流しながら次第に太くなって、肝門部という肝臓からの出口で一本にまとまります。これを総肝管といいます。総肝管は、胆のうとつながる胆のう管が合流して総胆管となり、膵臓の中を通って、膵液を運ぶ膵管とともに小腸の一部である十二指腸へつながります。このつなぎ目が十二指腸乳頭です。さらに肝外胆管は、肝臓に近い肝門部領域胆管と、膵臓に近い遠位胆管に分けられます。胆道は、肝臓でつくられる胆汁という消化を助ける液を小腸に送る働きをしています。食べたものが十二指腸に届くと、胆嚢に一時的にためられて濃縮された胆汁が、胆のう管、総胆管を通って十二指腸に送り出され、小腸での脂肪の消化を助けます。胆汁にはビリルビンという黄色の色素が含まれます。これが便と混じって排泄されるため、正常な便の色は茶褐色になります。

目次

胆道がんとは

胆道がんは、胆道にできるがんの総称で、発生した部位によって胆道がん、胆のうがん、十二指腸乳頭がんに分類されます。胆管がんは、がんが発生した場所が肝臓の中か外かによって肝内胆管がんと肝外胆管がんに分類されます。さらに、肝外胆管がんは、胆管のどの部分に発生したかによって肝門部領域胆管がんと遠位胆管がんに分類されます。
日本でぇあ、1年間に約2万3千人が胆道がんを発症し、約1万8千人が死亡しており、がん死亡原因の第6位となっています。

原因

胆道がんの原因としては、原発性硬化性胆管炎などの慢性炎症に加え、先天性胆道拡張症、水胆管合流異常などの先天性疾患も指摘されています。近年では印刷工場で塩素系有機洗浄剤を使用してきた作業員が高頻度で胆管がんを発症していることが報告されました。塩素系有機洗浄剤の主成分であったジクロロプロパンという化学物質が原因物資であることをWHOが認定しました。

症状

胆道がんの症状には、黄疸、右わき腹の痛み、発熱、体重減少などがあります。肝外胆管がんや十二指腸乳頭部がんでは、黄疸がよくみられます。黄疸は、胆管の内部ががんによって狭くなったり詰まったりして、黄色の色素であるビリルビンを含む胆汁が血液中に流れ込むことにより起こります。皮膚や白目が黄色くなったり、尿の色が茶色っぽく濃くなったりするほかに、皮膚にかゆみが出ることもあります。一方、十二指腸に排出されるビリルビンの量が減るため、便の色が白っぽくなることもあります。黄疸のほかに、みぞおちや右わき腹の痛み、発熱、全身のだるさ、食欲不振などの症状が出ることもあります。
肝内胆管がんや胆のうがんでは、早期には症状が出ないことが多いがんです。進行すると黄疸が見られることがあり、胆のうがんではみぞおちや右わき腹の痛みが出ることもあります。ただし、このような痛みは胆石症などのがん以外の病気によって出ることもあります。

当院で行う主な検査

血液検査

腫瘍マーカーであるCA19-9やCEAを測定します。
ビリルビンや、胆道・肝臓の機能を示すALP、γ-GTPの量を調べます。

画像検査(腹部超音波検査・造影CT検査・腹部MRI)

腹部超音波検査では、胆管の狭窄や胆汁がたまった部分の拡張を確認します。
CT検査では、がんの広がりや、胆管が拡張している場所、他の臓器への転移の有無などを調べます。MRI検査も同様に、がんの広がりやほかの臓器への転移を確認します。

内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)

内視鏡を口から入れ、十二指腸乳頭からカテーテルを通し、胆管内に造影剤を注入してX線で撮影します。胆管の狭窄の原因(がんによるものなのか)や、がんの広がり(胆管内部にとどまっているのか、胆のう管や総胆管へ広がっているのかなど)を調べます。

当院で可能な治療

胆道がんの治療は、手術が最も有効と考えられています。そのため、まず手術できるかどうかを検討し、手術ができない場合は薬物療法を中心とした治療を行います。

内視鏡治療

胆道流出不良による黄疸がみられれば、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)を行って胆汁の流れをよくします。切除不能例においては、金属ステント(SEMS)留置術を行います。

外科治療

がんの広がりや大きさに応じて、できるだけ完全にがんを取りきることのできる方法を検討します。がんの場所によっては、胆道にできたがんとともに肝臓の一部を切除することがあります。肝臓を広範囲に切除する場合には、手術の前に、残肝予備能評価(切除顔に残る可能の大きさや機能を予測すること)を行い、手術ができるかどうか検討します。
肝臓を半分以上切除する場合には、手術後も肝臓の機能を維持するために、手術の前に門脈塞栓術(切除する側の肝臓の門脈を塞ぎ、残す側の肝臓の血流を増やす手術)を行って、残す側の肝臓の容積をあらかじめ大きくすることがあります。また、肝臓を広範囲に切除する場合、黄疸の症状があるときは、手術の前に胆道ドレナージを行います。

肝内胆管がん

がんが肝臓の左(左側の小さい部分)・右(右側の大きい部分)のどちらかのみにある場合には、がんとその周辺の肝臓の一部、またはがんのある側を切除します。がんが左右を超えて広がっている場合には、さらに大きく切除する拡大片肝切除術を行います。がんが肝門の近くにある場合には、肝外胆管や胆のうの切除を行うこともあります。

肝門部領域胆管がん

がんを取りきることを目的として、肝外胆管と胆のうを切除し、さらに肝臓の左右どちらか半分を一緒に切除します(拡大片肝切除術)。がんの中心が右寄りであれば右半分の肝臓を、左寄りであれば左半分の肝臓を切除します。がんの範囲が非常に広範囲の場合は、肝臓だけでなく膵臓も同時に切除することがあります。肝門部領域では、胆管、門脈、肝動脈が分岐していて構造が複雑なので、肝門部領域胆管がんの手術は難しい手術になります。切除後は、残した胆管と小腸をつなぐ再建手術を行います。

遠位胆管がん

遠位胆管は膵臓を通っているため、遠位胆管にできたがんは膵臓に広がることがあります。そのため、膵頭十二指腸切除術を行って、肝外胆管、胆のう、膵頭部(十二指腸に接している側の膵臓)、十二指腸および連続する胃や小腸の一部を切除するのが一般的です。切除後は、残した胆管や膵臓、胃を小腸とつなぎ合わせ、食物や消化液が小腸に流れるようにするなどの再建手術を行います。

胆嚢がん

がんが胆のう内部にとどまっている場合には、胆のうの摘出手術を行います。がんが胆のう周囲まで広がっている場合には、その広がりに応じて、肝臓、胆管、膵臓、大腸、十二指腸など周りの臓器の切除が必要になります。

十二指腸乳頭部がん

十二指腸乳頭部がんの標準手術は膵頭十二指腸切除術です。この手術では、十二指腸、膵頭部、肝外胆管、胆のう、連続している胃や小腸の一部を切除します。残った胆管や膵臓、胃尾を小腸につなぎ合わせる再建手術を行います。

胆道がんの手術は、ごく早期の場合を除いて切除範囲が大きくなることが多く、また、施設間の格差が存在するので、熟練した施設で受けることが勧められます。当院は、肝胆膵外科高度技能指導医が常勤しており、日本肝胆膵外科学会から、厳正な審査の結果、高度技能専門医制度修練施設に認定されております。

薬物療法(抗がん剤治療)

手術によってがんを取りきることが難しい場合やがんが再発した場合に、薬を使った治療を行います。薬物療法のみで完治することは困難ですが、がんの進行を抑えることにより、延命したり、症状を和らげたりできることがあります。
胆道がんの薬物治療では、ゲムシタビン、シスプラチン、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤を使用します。複数の薬を組み合わせることによってより高い効果が出ます。標準治療には、以下のようなものがあります。
GC療法:ゲムシタビンとシスプラチンを併用
GS療法:ゲムシタビンとテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤を併用
GCS療法:ゲムシタビン、シスプラチン、テガフール・ギメラシル・オテラシウカリウム配合剤併用
特定のがん遺伝子検査の結果、遺伝子変異があった場合には、以下の薬を使うことがあります。
ペンブロリズマブ(MSI検査)
ペミガチニブ(FGFR2融合遺伝子検査)

受診方法

消化器病センター(消化器・肝臓内科/外科)をご受診ください。
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