重要なお知らせ

大腸がん

大腸は、食べ物の最後の鳥道です。小腸に続いて、右下腹部から始まり、お腹の中をぐるりと大きく時計回りに回って、肛門につながります。全長1.5から2mほどの臓器で、「結腸(盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)」と「直腸」の2つにわかれます。
大腸は、水分を吸収します。大腸に入った食物残渣(食べ物の残りかす)は、水分を吸い取られ、肛門に至るまでに徐々に固形の便となり、肛門から排出されます。

目次

大腸がんとは

大腸がんは、腺腫という良性のポリープががんかして発生するものと、大腸(結腸・直腸)の壁の内側を覆う粘膜から直接発生するものがあります。日本人では約70%がS状結腸と直腸に発生するといわれています。日本では、高齢化や食生活の欧米化などにより年々増加しており、がん死亡原因の第2位となっています。

原因

大腸がんの発生には、生活習慣、特に食生活との関わりが深いと考えられています。赤みの肉や加工肉をよく食べる習慣や、低繊維・高脂肪の食事、過度な飲酒、運動不足、肥満はがん発生のリスクを高めるといわれています。
さらに、大腸がんの発がんは、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)や遺伝性疾患(家屋性大腸腺腫症、リンチ症候群など)との関連が明らかになっています。

症状

早期の段階では自覚症状がほとんどなく、進行すると症状が出ることがあります。症状としては、血便(便に血が混じる)、下血(腸からの出血により赤または赤黒い便が出る、便の表面に血液が付着する)、下痢と便秘の繰り返し、便が細い、便が残る感じ、おなかが張る、腹痛、腹痛、貧血、体重減少などがあります。
最も頻度が高い血便、下血は時などの良性の病気でもみられるため、そのままにしておくとがんが進行してから見つかることがあります。大腸がんの早期発見のために早めに消化器病センターを受診することが大切です。
がんが進行すると、慢性的な出血による貧血や、腸が狭くなる(狭窄する)ことによる便秘や下痢、おなかが張るなどの症状が出ることがあります。さらに進行すると腸閉塞となり、腹痛、吐き気などの症状が出ます。大腸がんの転移が、肺や肝臓の腫瘤として先に発見されることもあります。

当院で行う主な検査

大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)

内視鏡を肛門から挿入して、直腸から盲腸までの大腸全体を詳しく調べます。大腸がんを見つけるための検査としては腫瘤になっています。腸管洗浄液という薬を飲んでいただき、腸の中をきれいにした状態で検査を行います。大腸の長さや形は個人差があり、仰向けや右向きへと患者さんの体の向きを変えながら内視鏡を進めていきます。 苦痛を少なくするために、静脈麻酔(鎮静剤)を使用して検査を行うことも可能です。

CTコロノグラフィ検査(大腸3D-CT検査)

肛門から二酸化炭素を注入してCT検査を行うことで、内視鏡を挿入せずに、大腸の内視鏡と同じような画像を摂ることが可能です、ただし、病変が疑われた場合には内視鏡検査が必要となり、「二度手間」となってしまうことがあります。

CT検査・MRI検査

離れた別の臓器やリンパ節への転移、肝臓など大腸のまわりの臓器へのひろがりなどを調べるために、CT検査やMRI検査が行われます。CT検査はX線、MRI検査は磁気を使って体の断面を撮影し、画像にする検査です。

当院で可能な治療

大腸がんの治療には、内視鏡治療、手術、薬物療法、放射線治療などがあります。がんで切除できる場合は、内視鏡治療または手術を行い、切除できない場合は、薬物療法を中心とした治療を行います。

内視鏡治療

早期の大腸がんに対して行う治療で、比較的小さな大腸がんに対して行うことが多い治療法です。がんの進行状態を踏まえ、患者さんのご希望を考慮した上で、外科医と内視鏡医が相談し、治療方針を決めます。

外科治療(手術)

内視鏡治療でがんの切除が難しい場合、手術を行います。手術には、お腹を大きく切開する開腹手術と、お腹に小さい孔を開けてそこから専用の器具を挿入して手術を行う腹腔鏡手術、ロボット支援下手術があります。手術では、がんの部分だけでなく、がんが広がっている可能性のある腸管とリンパ節も切除します。がんが周囲の臓器にまで及んでいる場合は、可能であればその臓器も一緒に切除します。腸管を切除した後は、残った腸管をつなぎ合わせます。腸管をつなぎ合わせることができない場合には、人工肛門をお腹に作ります。

直腸切断術

リンパ節郭清の一例(上行結腸がん)

低侵襲手術

腹腔鏡手術、ロボット支援下手術では、二酸化炭素でお腹を膨らませ、お腹の中を内視鏡(腹腔鏡)で観察しながら手術を行います。腹腔鏡手術は開腹手術に比べお腹のきずが小さいため、手術後の痛みが少なく回復が早いという長所がある一方、開腹手術に比べて時間が長くなりやすく、手術費用が高くなります。

肛門温存手術

直腸は肛門から約20cmまでの大腸のことで、排泄に関わる大切な臓器です。直腸は骨盤に囲まれた狭い場所にあり、男性では膀胱と前立腺、女性では子宮に接しています。直腸の周辺には自律神経が集まっており、排便だけではなく、排尿、性機能を司っています。 これまでは直腸がん治療のために、排泄機能や性機能を失ってしまうことは仕方のないことと考えられてきました(図4)。
しかし、がんの進展を正確に把握し、適切な術式を選択することで、排泄や性機能を保ったまま、がんの根治的な切除が可能になりました。ISR手術は究極の肛門温存手術と言われ、肛門括約筋を温存し、肛門近くに存在するがんを切除する画期的な術式です(図5)。全ての直腸がん患者さんに適応できるわけではありませんが、早期がんの患者さん、腫瘍がT2までの患者さんでは、肛門温存が可能となります。また、進行癌でも化学療法との組み合わせで温存が可能になる場合もあります。十分な診療経験をもつ専門医が対応致します。他院で人工肛門を勧められた患者さまも肛門温存が可能になる場合もございますのでご相談下さい。

内肛門括約筋切除術(ISR)

転移・再発

大腸がんが転移・再発する部位では、肝臓が最も多いことが知られています。
大腸がんから肝臓に転移したがんに対しては、肝切除が最も有効とされているため、可能な限り肝切除を行います。肝切除が可能かどうか、がんの個数、大きさ、位置、肝予備能などによって判定します。
手術が困難な場合は、薬物療法で治療します。最近の薬物療法の開発は日進月歩ですので、はじめは切除が困難であった方でも、薬物療法の効果によってがんが小さくなって切除できるようになる方も増えてきています。手術と薬物療法をタイミングよく組み合わせていくことが重要です。

薬物療法(抗がん剤治療)

手術によりがんを取りきることが難しい場合に、薬を使った治療を行います。がんを小さくして手術ができるようにしたり、がんの進行を抑え、延命及び症状を緩和するこがが目的です。薬物療法のみで完治することは難しいですが、薬物療法を行うことにより、生存期間が延長し、生活の質を向上させることができます。
大腸がんの薬物療法で使う薬には、細胞障害性抗がん剤(フッ化ピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカンなど)、分子標的薬(ベバシズマブ、ラムシルマブ、アフリベルセプト、セツキシマブ、パニツブマブなど)、免疫チェックポイント阻害薬(ペンブロリズマブ、ニボルマブなど)があります。これらの薬を単独または組み合わせて、治療を行います。薬物治療で使用する薬の組み合わせは複数あります。
また、大腸がんでは、治療を始める前に、がんの組織の遺伝子を調べる検査(RAS遺伝子検査、BRAF遺伝子検査、MSI検査、HER2タンパク質検査)を行い、その結果によって治療を検討します。

受診方法

消化器病センター(消化器・肝臓内科/外科)をご受診ください。
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