重要なお知らせ

膵臓がん

膵臓は、胃の後ろにある、長さ20cmほどの左右に細長い臓器です。右端のふくらんだ部分を頭部といい、十二指腸に囲まれています。左側の幅が狭くなっている部分は尾部といい、脾臓に接しています。膵臓の真ん中は体部といいます。
膵臓の内部には膵管という細長い管が網の目のように走っています。
膵臓には2つの役割があります。食物の消化を助ける膵液を作り分泌すること(外分泌機能)と、血糖値の調節などをするインスリンなどのホルモンを作り分泌すること(内分泌機能)です。膵液は膵管によって運ばれ、主膵管という1本の管に集まります。主膵管は、十二指腸乳頭で、肝臓から総胆管を通って運ばれてくる胆汁と合流して十二指腸に流れていきます。

目次

膵臓がんとは

膵臓がんは膵臓にできるがんで、多くは膵管の細胞から発生します。日本における膵臓がんの罹患者数、死亡者数はともに増加傾向にあり、がん死亡原因の第4位となっています。

原因

膵臓がんの発生を高めるリスクとして、糖尿病、肥満、飲酒や喫煙等が挙げられます。また、慢性膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍の既往を持つ方や、血縁のあるご家族に膵臓がんを患った方が多い場合は、発生リスクが高まることが知られています。

症状

膵臓は、がんが発生しても症状が出にくく、発見時には進行膵臓がんと診断されることが少なくありません。進行してくると、腹痛、食欲不振、腹部膨満感、黄疸、腰や背中の痛みなどが起こります。その他、急な糖尿病の発症や悪化が見られることがあり、発見のきっかけになることもあります。

当院で行う主な検査

画像検査(腹部超音波検査、造影CT検査、MRI)

腹部超音波検査は簡便で体への負担が少ない安全な検査ですが、膵臓全体を観察することが難しい場合があります。造影CTは膵臓を含む腹部全体をみることが可能で、膵臓がんの存在とともに、周囲組織へのがんの広がりや、遠隔転移を有無を確認できます。病期(ステージ)診断・手術による切除の可能性の判断にも有用です。

内視鏡検査

超音波内視鏡検査(EUS)

内視鏡の先に超音波画像装置が装着された内視鏡で、腹部超音波検査では完全に見ることのできない膵臓全体を観察することができる検査です。膵臓がんと診断するために組織を採取して、病理学的に診断する超音波内視鏡下穿刺吸引(EUS-FNA)を行うことも可能です。

内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)

内視鏡を口から入れて十二指腸まで進め、胆管や膵管に細いチューブを挿入し造影剤を注入してレントゲン写真を撮影し、胆嚢や胆管及び膵管の異常を調べる検査です。膵管内の細胞を採取して病理学的に診断するERCP下膵液細胞診(SPACE)も行うことができます。

当院で可能な治療

膵臓がんの治療には、手術、薬物療法、放射線治療があります。手術が唯一根治が期待できる治療です。がんが切除できる場合は、手術のみ、もしくは手術と薬物療法を組み合わせた治療(集学的治療)を行います。がんが別の臓器に転移したり、膵臓周辺の大きな血管を巻き込んでいたりして手術ができない場合は、薬物療法や放射線治療を行います。

外科治療(手術)

膵臓がんの手術には、膵頭十二指腸切除術、膵体尾部切除術、膵全摘術があります。

膵頭十二指腸切除術

膵頭部を中心にがんがある場合、十二指腸、胆管、胆のうを含めて膵頭部を切除します。がんが血管を巻き込んでいる疑いがある場合は血管の一部も切除します。切除後は、残った膵臓を小腸につなぎ合わせ、膵液が小腸に流れるようにします。(再建手術)。同様に、胆管と小腸、胃と小腸もつなぎ合わせます。
複数の臓器を同時に切除し、かつ、複雑な3つの再建が必要で、お腹の手術では最も大きな手術のひとつです。
膵頭十二指腸切除術は熟練した施設で手術を受けることが勧められます。当院は、肝胆膵外科高度技能指導医が常勤しており、日本肝胆膵外科学会から、厳正な審査の結果、高度技能専門医制度修練施設に認定されています。

膵体尾部切除術

膵体部もしくは膵尾部のがんの場合、膵臓の体部と尾部を切除します。通常は脾臓も摘出します。消化管は切除しないので、消化管同士をつなぎ合わせる再建手術は必要ありません。

膵全摘術

がんが膵臓全体に及ぶ場合は、膵臓を全て摘出します。膵臓の機能を失うため、膵臓から出ていたインスリンや消化酵素を補うなどの治療を続けることが必要になります。

低侵襲手術

医療機器の発展に伴い、小さなきずで行う手術「低侵襲手術」が可能となってきました。従来、お腹の手術は腹部を広く開けて行っていたため(開腹手術)大きなきずが残っていました。低侵襲手術では、お腹に数か所小さな孔を開け、そこからカメラや手術器具を入れてモニターを見ながら手術を行います。
きずが小さいため、術後の痛みが少ないなどのメリットがあります。一方で小さな孔から手術を行いますので手術器具の動作制限がある、直接臓器を触ることができないなどのデメリットもあります。
手術の途中で開腹手術に切り替えることもあります。
当院では、膵臓がんの低侵襲手術に最新鋭の手術支援ロボット「da Vinci Xi」を導入しています。

薬物療法(抗がん剤治療)

手術によってがんを取りきることが難しい場合や、がんが再発した場合に、薬を使った治療を行います。薬物療法のみで完治することは困難ですが、がんの進行を抑えることにより、延命したり、症状を和らげたりできることがあります。 一般的に以下のような薬を使います。

ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法
2種類の点滴の抗がん剤を組み合わせた治療です。週1回を3週間連続で行い、4週目を休薬、これを1コースとして4週毎に繰り返します。

FOLFIRINOXフルオロウラシル・レボホリナート・イリノテカン・オキサリプラチン)療法
多種類の点滴の抗がん剤を組み合わせた治療です。点滴に2日かかるため、投与開始して2日後に点滴の針を抜きます。外来で治療を行うために、皮下に中心静脈ポートの埋め込み手術が必要です。

ゲムシタビン療法
点滴の抗がん剤治療です。週1回を3週間連続で行い、4週目を休薬、これを1コースとして4週毎に繰り返します。

フルオロウラシル・レボホリナート・ナノリポソーム型イリノテカン療法
多種類の点滴の抗がん剤を組み合わせた治療です。ゲムシタビンベースの一時療法が無効になった方に対する二次療法として用いられます。点滴に2日かかるため、投与開始して2苺に点滴の針を抜きます。外来で治療を行うために、皮下に中心静脈ポートの埋め込み手術が必要になります。

テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤
飲み薬の抗がん剤治療です。1日2回、4週間の内服を行い、2週間休薬、これを1コースとして6週毎に繰り返します。

特定のがん遺伝子検査の結果、遺伝子変異があった場合には、以下の薬を使うことがあります。
オラパリブ(BRCA検査)
ペンブロリズマブ(MSI検査)
エヌトレクチニブ(NTRK融合遺伝子検査)

膵臓がんの合併症に対する治療

膵臓がんが胆道に広がることで胆道狭窄・閉塞を起こし黄疸が起こっている場合には、内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)・内視鏡的胆道ドレナージを行います。病状に応じて金属ステント(SEMS)留置術を行います。
十二指腸に広がることで狭くなり、食べ物の通貨障害が起きたときは、消化管ステントを挿入して十二指腸を広げます。

受診方法

消化器病センター(消化器・肝臓内科/外科)をご受診ください。
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