腎盂と尿管は、腎臓でつくられた尿が通る管状の臓器で、膀胱につながっています。尿管はただのチューブではなく、尿管平滑筋の蠕動(ぜんどう:徐々に動くこと)運動により、低圧で尿を膀胱に送る働きがあります。腎盂には、そのペースメーカーがあるといわれています。腎盂、尿管は尾側でつながっている膀胱と同様の尿路上皮という粘膜で内側が覆われています。この腎盂、尿管の粘膜から発生するのが腎盂がんおよび尿管がんです。
腎盂尿管がんの発症頻度は膀胱がんの約20分の1と比較的まれです。全尿路上皮がんに対する割合は腎盂がん5%、尿管がん1~2%程度です。尿管がんの部位別発症頻度は、下部尿管(73%)、中部尿管(24%)、上部尿管(3%)の順です。
早期では症状がないため、健康診断の尿検査で「尿に血が混じっている」と指摘されることもあります。腫瘍のサイズがある程度大きくなると、自覚症状として痛みのない、目で見てわかる血尿(赤い尿)が現れます。腫瘍により尿管が徐々に閉塞した場合は、水腎症(すいじんしょう:腎盂から尿管にかけての部分が拡張すること)が起こり、超音波検査やCT検査などで発見されることもあります。水腎症が起きた場合は、がんのある側に腰や背中の痛みを自覚することもあります。
血尿の有無や、尿細胞診で尿中のがん細胞の有無を判定します。
副作用がほとんどなく行える検査です。そのため、人間ドックなどで腹部の臓器をみる検査として広く行われます。腎盂内の腫瘍の有無や水腎症の有無などを検査します。
主にCTが行われます。造影CTで腫瘍の大きさ、性質や状態、周囲の臓器へのひろがりや転移の有無などを調べます。造影剤を用いたCT urography(CTウログラフィー)という方法では、尿路内で腫瘍がどこにあるのか見ることができます。CTで造影剤が使用できない場合や、腫瘍の性質や状態の判断が困難な場合などはMRI検査を行います。
尿が排泄される出口に近い尿道から膀胱を経て尿管内に細いカテーテルを挿入し、造影剤を注入して腎盂や尿路の状態をみます。同時に腎盂や尿管の尿を採取し、細胞診検査を提出することができます。
尿道から内視鏡を挿入し、腎盂尿管を観察します。直接腫瘍を確認することが可能で、腫瘍組織を少量採取し、がんの病理学的検査を行うこともあります。麻酔が必要となるため、検査の際は入院となります。
腎盂・尿管がんは、①がんの広がり、②リンパ節への転移の有無、③他の臓器への転移の有無についてTNM分類に基づき判断されるのが一般的です。
これらのT、N、Mに基づき、腎盂・尿管がんステージが決まります。
転移がない場合、手術が第一選択となります。早期に手術を行えば、根治出来る可能性が高い病気です。 腎盂・尿管がんの場合、腎尿管全摘除術を行います。
5~12mm程度の穴を数か所お腹に開け、お腹の中を炭酸ガスで膨らませ、その穴から手術用のカメラや器具を挿入して行う手術の事です。開腹手術と比較して、出血が少なく、カメラによる拡大視野で手術を行うため精密な手術が行え、出血を最小限に抑えることができます。傷が小さく、手術後の痛みが少ないことも特徴です。手術後の回復も早く入院期間も短縮でき、早期の社会復帰が期待できます。
当院では、腎盂・尿管がんに対するロボット手術を行っています。詳細についてはこちらをご覧ください。
転移を起こしてしまった腎盂・尿管がんに対し、シスプラチンという抗がん剤を含んだ多剤化学療法が標準治療になります。化学療法としては、GC療法(ゲムシタビンとシスプラチン)、MVAC療法(シスプラチン、メソトレキセート、ビンブラスチン、アドリアマイシン)などの抗がん剤を組み合わせ静脈から点滴をする、多剤併用化学療法が一般的です。有効率はGC療法、MVAC療法どちらも同等ですが、当院ではより副作用の少ないGC療法を第1選択治療としています。
進行あるいは転移を起こした腎盂・尿管がんに対し抗がん剤が効かない場合、免疫療法が次の治療として有効な可能性があります。腎盂・尿管がんに対する免疫チェックポイント阻害薬として、ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)を使用します(保険診療)。1回の治療につき200mgの薬剤を30分かけて点滴から投与します。
当院では外来通院での治療も可能です。一般に抗がん剤より副作用は軽微と言われていますが、免疫に関連した副作用(間質性肺疾患、大腸炎・下痢、皮膚障害、肝機能障害、肝炎・甲状腺機能障害、副腎機能障害)が出現することがあります。
エンホルツマブベドチン(パドセブ)は腎盂・尿管がんの大部分を占める尿路上皮がんの細胞にあるネクチン-4を認識する抗体であるエンホルツマブに、抗がん剤のモノメチルアウリスタチンE(MMAE) を結合させることで、抗がん剤ががん細胞にのみ作用するように工夫した薬剤です。皮膚障害、神経障害、味覚障害、高血糖などの副作用に注意が必要です。
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