食道は、のどと胃の間をつなぐ40~45cm程度の管状の臓器です。部位によって、頸部食道、胸部食道、腹部食道に分かれます。食道は体の中心部にあり、気管や大動脈、心臓、肺などの臓器や背骨に囲まれています。
食道は、口から食べた食物を胃に送る働きをしています。食物を飲み込んだときには、食物は重力で下に流れるとともに、筋肉でできた食道の壁が動くことにより胃に送り込まれます。食道は、胃の中の食物の逆流を防止する構造になっています。
食道の粘膜から発生したがんは、大きくなると外側に広がっていきます。がんが食道の壁の粘膜内に留まるがんを早期がん、粘膜下層までしか及んでないがんを表在がん、それより深い層まで及んでいるがんを進行がんと呼びます。
食道がんは、どこにでもできる可能性がありますが、日本の食道がんの約半数が食道の中央付近からでき、次に食道の下部に多くできます。食道がんは、食道内にいくつも同時にできることがあります。
日本の食道がんは、扁平上皮がんというタイプが90%以上で、欧米に多いとされる腺がんというタイプは5%以下です。
食道がんの主な原因は、飲酒と喫煙です。飲酒と喫煙の両方があるとさらにリスクが高まります。飲酒により体内に生じるアセトアルデヒドは発がん性の物質です。日本人にはアセトアルデヒドを分解する働きが弱い人が多く、これらの人は飲酒ですぐに顔が赤くなります(フラッシャー)。フラッシャーが飲酒を続けると食道がんが発生するリスクが高まります。
食道がんは、初期には自覚症状がほとんどありません。早期発見の機会としては、検診や人間ドックの際の、内視鏡検査や、上部消化管造影検査(バリウム食道透視検査)があります。がんが進行するにつれて、飲食時の胸の違和感、飲食物がつかえる感じ、胸や背中の痛み、咳、声のかすれなどの症状が出ます。
食道がんを見つけるための検査としては主流になっています。内視鏡の先端につけたレンズを通して直接、食道の粘膜をみます。昨今では、特殊な色素を粘膜に散布したり、特殊な波長の光を使用したりして早期食道がんの発見に取り組んでいます。
どうしても内視鏡を受けるのが辛いという方には、静脈麻酔(鎮静剤)を使用して検査を行うことも可能です。
バリウムを飲んで、それが食道を通過するところをX線で撮影する検査です。がんの場所や大きさ、食道内腔の狭さなど全体を確認します。通常、胃と食道は一緒に検査します。
離れた別の臓器やリンパ節への転移、肝臓や肺など、胃のまわりの臓器への広がりを調べるために、CT検査やMRI検査を行います。CT検査はX線、MRI検査は磁気を使って体の断面を撮影し、画像にする検査です。
食道がんの治療には、内視鏡治療、手術、薬物療法、放射線治療などがあります。それぞれの治療法の特長を生かしながら、単独もしくは組み合わせた治療を行います。
食道がんに対する内視鏡治療は、まわりのリンパ節に転移していない早期の食道がんに限られます。比較的小さな食道がんに対して行うことが多い治療法です。がんの進行状態を踏まえ、患者さんのご希望を考慮した上で、外科医と内視鏡医が相談し、治療方針を決めます。
手術は現在食道がんに対する標準的な治療法です。がんを含めた食道との一部を切除し、同時にリンパ節を含む周囲の組織を切除します。食道切除後は、胃や腸を使って食物の新しい通路をつくる手術(再建手術)を行います。一度の手術で頸部・胸部・腹部の3部位に手術操作が必要で、身体への負担が大きいことが特徴です。最近では胸腔鏡や腹腔鏡などを使ってきずを小さくする方法があります。
手術や放射線治療が難しい場合には、薬を使った治療を行います。薬物療法だけでがんを完全に治すことは困難ですが、がんの進行を抑えることにより、延命したり、症状を和らげたりできることがあります。
食道がんに有効な薬は、フッ化ピリミジン系薬(5-フルオロウラシルやテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)、プラチナ系薬(シウプラチンやネダプラチン)
タキサン系薬(パクリタキセルやドセタキセル)、免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブやペンブロリズマブなどの抗PD-1抗体薬)などがあります。これらの薬を単独もしくは組み合わせて使用しますが、通常初回治療としては、5-フルオロウラシルとシスプラチンの併用療法を4週毎に繰り返します。
効果が乏しくなった場合は、免疫チェックポイント阻害薬などを使います。
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