胃は、みぞおちあたりにある袋状の臓器です。食道からつながる胃の入り口を噴門、十二指腸へつながる胃の出口を幽門といいます。
胃は、食べ物を貯留、消化、攪拌する役割があります。噴門は食べ物が食道に逆流するのを防ぎ、幽門は消化された食べ物を十二指腸へ送り出す量を調節します。
胃がんは、胃の壁の内側を覆う粘膜の細胞が何らかの原因でがん細胞となり、無秩序に増えていくことで発生します。日本を含む東アジアで多くみられ、日本では、がん死亡原因の第3位となっています。
日本では、胃がんの約99%にヘリコバクター・ピロリ菌が関連しています。ピロリ菌の持続的な感染が、慢性的な胃炎をもたらし、ひいては胃癌を引き起こします。
ピロリ菌以外の胃がんの原因として、塩分摂取、喫煙、高血糖、EBウイルス感染、自己免疫性胃炎、遺伝子異常などがあります。
最近、日本では、衛生状態の改善や除菌治療の普及により、ピロリ菌感染が急速に減ってきており、それにともなって胃がんの罹患者数、死亡者数がともに減ってきています。
胃がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどなく、進行しても症状がない場合もあります。代表的な症状は、胃(みぞおち)の痛み、不快感、違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振などです。また、がんから出血することによって、貧血が起こったり、黒色便(血便)が出たりすることがあります。
しかし、これらは胃がんだけにみられる症状ではなく、胃炎や胃潰瘍の場合もでも起こります。胃炎や胃潰瘍などの治療で内視鏡検査を行ったときに偶然胃がんが見つかることもあります。
他にも、食事がつかえる、体重が減る、といった症状がある場合には、進行胃がんの可能性もあります。
胃がんを見つけるための検査としては主流になっています。内視鏡の先端につけたレンズを通して直接胃袋の中をみます。
どうしても内視鏡を受けるのが辛いという方には、静脈麻酔(鎮静剤)を使用して検査を行うことも可能です。
飲んだバリウムを胃の中に薄く広げて、胃の形や表面の凹凸をレントゲンで観察するものです。胃カメラが苦手なひとには良い検査かもしれません。
ただし、異常がみとめられた場合には、最終的に胃カメラを受けなければならないこともあり、「2度手間」のリスクがあります。
離れた別の臓器やリンパ節への転移、肝臓や肺など、胃のまわりの臓器への浸潤を調べるために、CT検査やMRI検査を行います。CT検査はX線、MRI検査は磁気を使って体の断面を撮影し、画像にする検査です。
胃がんの治療には、内視鏡治療、手術、薬物療法、放射線治療などがあります。がんが切除できる場合には、内視鏡治療または手術を行い、切除できない場合は、薬物療法を中心とした治療を行います。
早期の胃がんに対して行う治療で、比較的小さな胃がんに対して行うことが多い治療法です。がんの進行状態を踏まえ、患者さんのご希望を考慮した上で、外科医と内視鏡医が相談し、治療方針を決めます。
内視鏡治療でがんの切除が難しい場合、手術を行います。手術には、お腹を大きく切開する開腹手術と、お腹に小さい孔を開けてそこから専用の器具を挿入して手術を行う腹腔鏡手術があります。手術では、がんと胃の一部またはすべてを取り除きます。同時に胃の周囲のリンパ節も切除します。切除した後は、消化管をつなぎ合わせて食べ物の通り道を作り直します(再建手術)。
切除する胃の範囲は、がんのある部分と進行度によって決まります。定型的には、胃全摘と胃の出口約3分の2を切除する幽門側胃切除が、縮小手術として噴門側胃切除、幽門保存胃切除などがあります。
腹腔鏡手術では、二酸化炭素でお腹を膨らませ、お腹の中を内視鏡(腹腔鏡)で観察しながら手術を行います。腹腔鏡手術は開腹手術に比べお腹のきずが小さいため、手術後の痛みが少なく回復が早いという長所がある一方、開腹手術に比べて時間が長くなりやすく、手術費用が高くなります。
手術によってがんを取りきることが難しい場合や、がんが再発した場合に、薬を使った治療を行います。薬物療法だけでがんを完全に治すことは困難ですが、がんの進行を抑えることにより、延命したり、症状を和らげたりできることがあります。
胃がんの薬物療法で使う薬には、細胞障害性抗がん剤であるフッ化ピリミジン系薬(5-フルオロウラシル、テガフール・ギメラシル、オテラシルカリウム配合剤、カペシタビン)、プラチナ系薬(シスプラチン、オキサリプラチン)、タキサン系薬(パクリタキセル、ドセタキセル)、イリノテカン、トイフリジン・チピラシル塩酸塩、分子標的薬であるトラスツズマブやラムシルマブ、トラスツズマブデルクステカン、免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブ、ペンブロリズマブがあります。これらの薬を単独または組み合わせて、治療を行います。
胃がんでは、HER2と呼ばれるたんぱく質ががん細胞に増殖にかくぁっている場合があるため、治療前にHER2検査を行い、HER2陽性の場合には、HER2タンパク質の働きを抑える分子標的薬(トラスツズマブ)を併用した化学療法(細胞障害性抗がん剤)やトラスツズマブデルクステカン療法を行うのが一般的です。
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