陰嚢が腫れる病気には様々なものがありますが、その中で最も注意しなければならないのが精巣腫瘍です。精巣腫瘍のほとんどは悪性腫瘍で、放置すると生命にかかわる事があります。最も多い症状は精巣(睾丸)が腫(は)れる、硬くなるといった症状です。痛みや発熱は伴わないことが多く、腫瘍が小さい段階では気づきにくいことがあります。精巣腫瘍は比較的短期間で増殖し、他の臓器(リンパ節、肺など)に転移することがあり、これによる症状(リンパ節の腫れ、肺転移による呼吸困難・血痰)などで発見されることもあります。
精巣腫瘍は10代後半から30歳代にかけて発生することが多く、受診をためらう方が多い傾向にありますが、早期に治療を行うことが非常に有利ですので、気になる症状があれば早急に受診しましょう。
その他、陰嚢が腫れる原因には、精巣上体炎、精巣炎、精索静脈瘤、陰嚢水腫、精液瘤などが考えられますが、鑑別が難しい場合もありますので、泌尿器科専門医と相談してください。
腫瘍マーカー(HCG、AFP、LDH)が上昇することがあり、これにより腫瘍の存在や量を推定します。
精巣に腫瘍があるかどうかを確認します。
精巣腫瘍の存在やリンパ節、肺などの転移の有無を調べるために行われます。
腫瘍細胞を顕微鏡で観察し、腫瘍の種類を決定します。
具体的にはセミノーマ、非セミノーマ(胎児性がん、卵黄嚢腫瘍、絨毛がん、奇形腫)などに分類されます。
精巣腫瘍の病期(ステージ)分類は、日本泌尿器学会病期分類(Ⅰ期:転移なし、 Ⅱ期:腹部のリンパ節に転移を認める、Ⅲ期:遠隔転移を認める)、TNM分類、IGCCC分類(予後良好群、中程度予後群、予後不良群)などを用いて病状がどの程度進んでいるのかを判断し、治療方針を決めます。
精巣腫瘍の治療は、転移がない場合、腹部のリンパ節に転移がある場合、遠隔転移がある場合の大きく3つに分かれます。
手術(高位精巣摘除術)後、経過観察を行います。再発率は15-30%程度とされますが、そのうち95%以上は化学療法や手術などにより治癒が可能です。
高位精巣摘除術後に、化学療法を行います。手術による病理結果次第では、放射線療法が選択される場合もあります。5年生存率は病状により70-90%とされています。
遠方のリンパ節や、肺などほかの臓器に転移がある場合、化学療法やリンパ節廓清術などを組み合わせた集学的な治療が必要です。5年生存率は病状により70-80%程度とされています。
ほとんどの場合、まず腫大した精巣を手術で摘出します。摘出後、病理組織検査を行い、血液検査、CTの結果などと併せて病期を決定します。手術時間は1時間程度、入院期間は通常1週間以内です。
リンパ節に転移がある場合などに行われます。開腹手術で約5-6時間程度、1カ月程度の入院が必要となります。
転移がある場合には化学療法を施行します。また、転移が無い状態でも再発や転移の危険性が高い場合に行われます。BEP療法(ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチン)が多く行われます。その他EP療法、VIP療法、TIP療法、CPT11+NDP療法、GEMOX療法なども行っております。治療期間は病期により異なりますが、多くは2~3カ月間の入院、通院が必要です。
また転移が無い場合の再発予防としてカルボプラチンの単剤投与する場合もあります。
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