当院では、腹腔鏡手術を支援するロボット「ダビンチ」、「ヒューゴ」の2台を利用しています。患者さんのお腹にあけた小さな穴に手術器具を取り付けたロボットアームと内視鏡を挿入し、医師がサージョンコンソールと呼ばれる操作器機で高精細な内視鏡画像を見ながらロボットを操作します。がんの手術においてはがんを取り残すことなく切除することが肝要である一方、術後の機能温存のために必要な神経は損傷させない工夫が必要です。この相反する命題を高度にクリアーすることができるのがロボットの最大の利点であるといえます。
当院では10名のロボット手術有資格者が在籍し日々研鑽を積んでいます。またロボット手術指導医資格であるプロクター医師も在籍し、続々とそれに続く向上心豊かな医師がおります。
ロボット手術 | 腹腔鏡 | 開腹 | |
---|---|---|---|
傷口 | 3 – 12mmの穴が数か所 | 8 – 12mmの穴が数か所 | 大きな傷 |
痛み | 軽い | 軽い | 痛い |
手術時間 | 長い | 少し長い | 短い |
体への負担 | 小さい | 小さい | 大きい |
入院期間 | 短い | 短い | 長い |
退院後の復帰 | 早い | 早い | 遅い |
ダヴィンチは米国Intuitive Surgical社が開発した手術支援ロボットで、1~2cmの小さな創より内視鏡カメラとロボットアームを挿入し、高度な内視鏡手術を可能にします。術者は3Dモニター画面を見ながらあたかも術野に手を入れているようにロボットアームを操作して手術を行います。 当院に導入した「ダヴィンチXi」は第4世代にあたる機器で世界でも最も活躍している標準機です。患者さんの身体的な負担が少ない腹腔鏡下手術の特長を生かしつつ、ロボットの機能による支援によって、従来不可能とされていた手術操作を可能とします。
【泌尿器科】ロボット支援下腎尿管全摘術とロボット支援下膀胱全摘術を同時施行
ヒューゴはMedtronic社が開発した腹腔鏡手術を支援する、最新の内視鏡下手術支援ロボットです。ダヴィンチが1つのボディに複数のアームを搭載しているのに対し、ヒューゴは1つのボディに1本のアームカートが搭載しているため、症例や患者さんに合わせたアームカートのセッティングが可能です。また、操作モニターは目線と同じ高さに設定できるため、モニターが見やすく術者の負担の軽減や手術スタッフとのコミュニケーション向上が期待されます。 当院は国内で6番目の導入となりました。
手術支援ロボット「 Hugo RAS System 」導入しました!
内視鏡や鉗子を挿入するため、5-12mmの傷で済みます
(術式によって異なります)。
ロボットによる精緻な操作により、開腹手術に比較して術中出血が少なくて済みます。前立腺全摘除術は比較的出血の多い手術でしたが、ロボット支援手術の導入により術中に輸血が行われた例はほとんどありません。
鉗子の正確で細密な動きによって体の機能を温存させる手術が期待できます。前立腺全摘除術では、開腹手術に比べて尿失禁や勃起機能の回復が早くなることが報告されています。腎部分切除術では、腫瘍を正確に早く切除できるため、腎機能に対するダメージが小さくなる可能性が報告されています。
傷口が小さいため、傷の痛みは少なく、術後の回復は早い傾向にあります。
創部の感染が少なく、腸閉塞などの合併症発生率も低い傾向にあります。
拡大視野で精密な切除が可能であるため、がんのより正確な切除が可能と言われています。
鉗子類には触覚がないため、術者には一定以上の経験が必要となります。ダヴィンチ、ヒューゴともにそれぞれの製造元(da Vinci: Intuitive Surgical社、Hugo:Medtronic社)の定めるトレーニングを終了し、認定資格を取得した医師が執刀いたしますので、ご安心ください。
前立腺全摘除術では25°頭を下げた姿勢で手術を行うため、この姿勢が難しい患者さん(脳動脈瘤や緑内障の患者さんの一部)はロボット支援手術を受けることができません。事前に眼科を受診していただいき確認し、医師が適切な判断をさせていただきます。
また、以前に腹部手術を受けたことのある患者さんも、ロボット手術を受けることができないことがあります。詳細は医師にご相談ください。
2020年9月より呼吸器外科・消化器外科・泌尿器科で手術支援ロボット、「ダビンチ」を用いた手術を精力的に行ってきました。このロボットにより、3Dモニターから映し出される高精細な画像と精度の高い動きをするアームにより、精度の高い手術が可能です。 がんの手術においてはがんを取り残すことなく切除することが肝要である一方、術後の機能温存のために必要な神経は損傷させない工夫が必要です。この相反する命題を高度にクリアーすることができるのがロボットの最大の利点であるといえます。 2022年より鼠経ヘルニアにもロボット支援手術を開始いたしました。現在ではダビンチ、Hugoともに応用しています。鼠経ヘルニア手術は現時点では自費診療ですが、2024年には保険適応になる予定です。非常に仕上がりがよく、精緻な手術で微細な血管や神経の温存が可能で術後の腫れや痛みなどを軽減しやすいメリットがあります。
2005年、東京医科大学病院泌尿器科において、国内初となる手術支援ロボット「ダビンチ」を使用した前立腺がんに対するロボット支援前立腺全摘術を開始しました。手術支援ロボットを用いることで、非常に精密な手術が可能となり、これまでの課題であった勃起障害や腹圧性尿失禁が著しく改善されました。また、出血量の大幅な減少や小さな傷による早期の社会復帰など、多くの利点も認められ、手術支援ロボットは急速に普及しました。悪性腫瘍の手術治療において、以前は根治性が大きく重視されていましたが、最近では根治性だけでなく低侵襲、機能温存の三つの側面を重視した治療が重要視されつつあります。前立腺がんのロボット手術はこれらの側面を高度なレベルで行えることが示されました。前立腺がんにおけるロボット手術の利点が認識され、泌尿器科分野におけるロボット手術は膀胱がんや腎がん(腎部分切除)などにも保険適応が広がり、さらに2022年4月からは尿管がんの腎尿管全摘、腎がんの腎摘、副腎腫瘍の副腎摘出などが保険適応となりました。泌尿器科の主要な悪性腫瘍の手術治療はほぼすべてロボット手術に移行しています。当科では、泌尿器悪性疾患の手術治療に対して積極的にロボット手術を導入し、適応術式を拡げております。また、ダビンチXiとHugo RASシステムの2つの手術支援ロボットを所有し、患者に対してより安全で確実なロボット支援手術を提供するために取り組んでいます。
【泌尿器科】Hugo RAS Systemプロクター認定医取得
当院は2020年6月に手術用ロボットの最新鋭機であるda Vinci Xiを導入いたしました。本邦における呼吸器外科領域でのロボット手術は2018年4月より肺がんに対する手術、 胸腺腫などの縦隔腫瘍に対する手術にも保険適用が拡大されております。私は既に2012年にスイスのチューリッヒ大学胸部外科への留学時代に縦隔腫瘍に対するロボット手術の経験があるのですが、 da Vinci Xiでは高画質で拡大した視野を3次元で構成して手術を行うため、 より正確・安全・繊細・複雑な手術手技が可能です。当科においては従来の”開胸手術”、 “胸腔鏡補助下の小開胸手術”、“完全胸腔鏡下手術” に新たに”ロボット支援下手術” が加わることになり、 手術術式の選択肢が増えることによって、 一層優れた手術を患者さんに提供することが可能な環境を整えております。当院では各診療科でのロボット手術を安全に実施するために、 精鋭メンバーで構成されたロボット手術チームを立ち上げており、 地域の皆さんに安心して最先端の治療を受けていただけるよう、 万全の態勢で臨んで参ります。ロボット手術に限らず、 御質問がございましたら、お気軽に外来を受診なさって下さい。